図書(小説)

ブログが人間の在り様を表現する一つの手段とするなら、ペットはその在り様に

深みと彩りを与えてくれる身近で切り離せない存在である。

(図書室ができるまで人間とペットの関わりを楽しんでください)

 

        パールとヘルパーさんそして私

                                KYO作

パールは私が呼ぶと「ピョイ」と返事をします。
2017年3月ホームヘルパーのおばさんが週1回部屋の掃除に来ることになりました。

「あら、小鳥を飼っていらっしゃるのですね。何て言うのですか」

「オカメインコのパールです」
「パール」・・・・「ヒョイ」

「あら、お返事するんですね。可愛いですねぇ。」
「パールくん」・・・・

パールは虎のように大きく口を開け「ギャー」と吠え、今にもおそいかかりそうでした。
「うわぁ!」
おばさんは、後ずさりをし、パールの行為にすごくショックをうけたようです。

「あら、どうしたのかしら」

おばさんは、パールは雌でパールくんではないこと。
しかも、意地悪でプライドが高い鳥であることを知りませんでした。

「初めての人に呼ばれるのが、嫌だったようですね。」
「それに、パールは娘なのでパールくんと呼ばれるが嫌だったかも。」

おばさんは、あまり納得しないようで、一通り部屋の片づけを終わらせるとパールのケージに近づき、もう一度
「パールくん」・・・・

「ギャーッ、ギャーッ」「ガチャン」

パールは大声で威嚇し、今度は、金具でできたケージに音が出るように噛みつきました。
一週間後も二週間後もパールの「ギャーッ」「ガチャン」は続きました。
普通、それでパールの事は、あきらめるものですが、このヘルパーのおばさんは、違いました。

そして、ひと月後のことでした。

「あら、パールちゃん威嚇しなくなったわ。私のこと好きになってくれたのかしら。」

パールは横を向き知らん顔をしていました。
明らかに根負けしたのが読み取れました。
まるで、置き物の鳥のように固まっていました。
絶対動くものかと言う固い意志が読み取れます。
いつも、パールのケージはほとんどが開けっ放しです。
パールは気が向けばケージから出て私の肩でうたた寝をし一緒に食事をするのが日課になっています。

一週間後ヘルパーのおばさんが、またやって来ました。
パールが、ケージの中で休んでいるときは、大きな風呂敷がケージをおおっています。
​つづく1

ただ、出入り口には、風呂敷の大きなトンネルができていて、そこから薄っすらと
ケージ内がみえます。

「パールちゃん、おはよう」

トンネルをのぞきながら、ヘルパーのおばさんが声がけしました。

「あら、パールちゃん、お留守かしら。」

​ケージの中からは、何の音も、何の動きも感じられません。
ヘルパーのおばさんは、流し台で洗い物をし、部屋の掃除機を掛け終えると風呂場
へ移りました。

その時です。ケージを見るとパールが風呂敷のトンネルを抜け身動きもせず聞き耳
を立てているではありませんか。
いつもは、真っ直ぐ私の右肩へ飛んで来、うまくくちばしを使い右の太ももまで移動します。
そして、子猫が甘えるような小さな低い声を出して頭を下げてきます。
それから、頭から背中にかけ「カリ、カリして」のどを「こちょ、こちょして」と
せがみます。
しかし、今は私など眼中に無いように完全無視です。
「カチッ!」と音がしておばさんが部屋に戻って来ました。
​パールはまるで煙のようにトンネルを通って姿を消しました。

​「あら、パールちゃん。」
「今、出てましたよね。」
「お利口さんね、お部屋に戻るんですね~。」

 

私は、何か嫌な気配を感じてなりませんでした。
パールが何か悪だくみを練るためケージに姿を隠したように思えてなりませんでした。
と言うのも、以前に苦い経験をしているからです。
パールが飛ぶ事を覚えたころ、手足に障害がある私は、パールを捕まえてケージの中
に押し込みました。
それはそれは大変な作業でした。
パールは何か危険を察知し私が近づけば逃げ、また逃げ、一向に捕まりません。
仕方がないので、パールが近くに来た瞬間にに電気をけし、部屋を真っ暗にして捕まえ
ました。
パールの鳥目を利用した我ながらなかなかのアイディアでした。とその時は思いました。
しかし、本当に困ったのは、パールがケージへ戻ってからだったのです。
血走った目とは、まさにあの時のパールの目を言うんでしょう。
鋭い眼光でじっと見つめ、私がケージに近づくや思い切りケージに嚙みつきました。
私がたじろぎ、後ずさりするまで「ガシィン、ガシィン」は続きました。
さらに、直径2㎝はあろう止まり木を真っ二つにしました。
誇張でもなんでもなく15分ほどで嚙み切ったのです。
そして、「ギャァ、ギャァ」鳴き出したのです。

それはそれは大きな声でした。
ただ、ただ近所から苦情が来ないことを祈るだけでした。
つづく 2


パールの蛮行は、収まることはなく購入してきた止まり木は次から次へ嚙み切られ、大き
くかん高い鳴き声もやむ事はありませんでした。
直径3㎝はあるだろう4本目の止まり木を嚙み切られた後、私はパールをケージから出しました。

パールは、勝ち誇ったように「ギャァ、ギャァ」しばらくは鳴いていました。
その時の私の気持ちは、敗北感でも屈辱感でもなく、ただ、ただ悲しかった事を覚えてい
ます。
しばらくすると奇妙な静寂が部屋を覆い、カーテンレールに陣取ったパールが私の右肩に 舞い降りてきました。
私の悲しみを感じとったのか、それとも餌付けの時を思い出したのか、なぜか神妙でした。
止まり木を付け直し、ケージを指差して

「go home!」

と言うとパールは自らケージの中に入って行きました。
その時から止まり木が折られる事はなくなりました。
パールが凄いとか賢いとは思いません。
ただ、鳥には、鳥の感情が確かにあったのです。
ケージが風呂敷のトンネルで部屋とつながり、パールの出入りが自由になったのはその時 からです。
パールは、しこたま遊んだらケージに戻り、私が「go home」と言えばケージに戻る。
確かに、これは事実です。
が「いつも、こんな事あるわけないでしょ。相手はパールですよ」

右肩に止まっているパールに

「もうそろそろ帰りなさい。go home!」

と言えば、低い鳴き声を発し右耳を ガッブ です。
人間ならさしずめ「うぜーんだよ。」と言ったところですか。
そんな時は、けんかをしても始まらないのでほっとくしかありません。
もちろん、いつもほっとくわけでは、ありません。
私だって、瞬間的に

「いてぇんだよ・・この ほでナス・・  この どてカボチャ・・」

とパールを振り払う事もあります。

ヘルパーのおばさんは、挨拶をすると何時ものように帰って行きました。
パールは、すかさずケージから飛び出し部屋を飛び回りました。
何か捜し物でもするように。

 

1週間が過ぎ、また水曜日がやってきました。

「ピンポーン・・・ピンポーン・・・おはようございます。」

「ピィー・・・ピィー」

鋭く、かん高く、大きな鳴き声です。

「いよいよ、始まるな・・これは」

と私は思いました。
もちろん、何が起こるか知るよしもありませんが、無責任にそう思っただけです。

「あら、パールちゃん、大きな声出して!」

ヘルパーのおばさんは、パールが陣取るケージの入り口へ無造作に近寄っていきます。
パールは私の右肩へ飛んで来て、おばさんと反対側を向き、動かず、一声も発しず、ひとま ず無視を決め込んだようです。
​つづく 3

 

「クック・・ク」

私はパールに気付かれ無いように笑いを抑えました。
​パールが

「いつもは、自分のかん高い声に、人は驚き、怖がるはずなのに、なんなんだ こいつは?」

と想っている事が容易に分かったからです。

「いつも一緒に居てくれる人が好きなんだね。パールちゃんは!」

その声を聞くとパールは、いつものカーテンレールでは無く、そばにある椅子の背もたれに
止まりました。

「逃げたのではない。居たい所に居るだけだ」

というパールなりの意地でしょうか。
ヘルパーさんは、パールに近づいて行き頭を撫でようとします。パールが悪さをしない時は
私がパールの頭を撫で、話し掛けているのを知っていますから。​
パールの顔が半分ほど口になりました。

「あら、嚙みつくのかしら」

「さあ?」

「痛いかしら」

「さあ?  触らせてもらえるかな~?」

ヘルパーのおばさんは、パールの頭に指をちかづけました。

「ガブッ・・・ガブッ・・ガブッ・ガブッ」

まあ、予想通りのごく自然なパールの反応ではありました。
ただ、へルパーさんが、珍しくパールに向かってひとこと言いました。

「てぇー・・ パール ! ・・・ こっちが食べちゃうぞ。」

そう言うと風呂とトイレの掃除をしに部屋をでました。



いつも、私の右肩に居るはずのパールは、椅子の背もたれの上を右や左と動き回っていまた。
まるで、若いダンサーが軽やかにステップを踏むかのように。
うれしくて楽しくて仕方ない自分の世界へ、観ている者をも誘っているかのように。

私はパールに出会うまで意地悪は、人間特有の感情だと思っていました。
好き嫌いの感情ではなく、相手を困らせ、その様子を見てうれしく思うなど何の得にもならないはず。
動物が、生きていく為に必要な行為とは思えないが・・・・? が、すぐに考えることが馬
鹿らしくなりました。
だって、目の前に事実が居るんですから、パールが目の前で踊っているんですから

「これは、事実ではない。あり得ない」

と言ったところで、しょうも無いでしょう。
てなわけで ありのまま、ありのままのパールと接しているわけです。
それに私には、パールに対して若干の負い目もありますし。
あれは、パールが飛び方を覚え歓びの絶頂にいる時、 私は私で子どもが、部屋で紙飛行機
を飛ばして遊ぶ様にパールと遊びました。

「go・・フライ! go・・ターン! go go !」

7畳程の部屋の壁の前で 何度もⅤ字ターンをきめ、私もパールも得意げでした。
そんな時に1匹のハエが部屋に入り込みました。
窓を開けてもドアをあけても外へは出ません。
殺虫スプレーは、パールに良くない。
それで、薬局でハエ取り紙を購入して壁に吊るしました。
​つづく 4

壁ぎりぎりなので、留まるのはハエしかいないと思っていました。
しかし、留まったのはハエではありませんでした。

「ギャーッ・ピイィ・ピイィ・・・ピイー」

ハエ取り紙に巻き付かれ、必死に助けを呼ぶ声

「パール!ごめんよ!ごめんよ!」

私は羽が傷つかないよう、慎重にはずしに掛かりました。
流し台へ連れて行き、ぬるま湯で、付いた糊を落とそうとしました。
パールは動かず、神妙にしていました。と言うより動けなかったのです。
目だけは、しっかり開き、私の洗いにたえていました。
私は、パールの目が閉じてしまわないか気が気ではありませんでした。
糊はついたままでしたが、私は、カンガルーの母親の様に濡れたままのパールをお腹の中に しまい込みました。

「パール!生きてくれよ!お願いだから生きてくれ!」

服の上から、優しくさすりながら、何度も何度も口づさみました。
お腹の中で動き出したのを見計らい、ケージに戻しました。

「パール!元気になったら味噌ラーメン食べても怒らないからね!」
「カフェオレ だってね!」

パールはきいてか聞かずかケージの中で静かにしていました。
パールの羽は、左右対称に開かづ、無理に開こうとすると太巻きの様に巻き付きます。

「ピイィ・ピイィ・ピイー」

外に出ようとしケージの入り口から、叩き落とされ、助けを求め、さえずるしか無いのです。


高所恐怖症の鳥になってしまったパール。
ケージへ戻され、途方に暮れるパール。
ケージの中にはキッチンタオルが敷き詰められています。
何をどの様にしたら良いのか分からなくなったパールは、床に顔を埋めます。
まるで、失恋した女の子が、毛布に顔を押しつけ、さめざめと泣くように。

「パール頑張れ!」

私はそう言いながら静かにその場を離れました。
しばらくするとパールは、芋虫の様にくちばしを使いながらケージをはい上りました。
そして、止まり木にたどり着くと毛づくろいを始めました。
何時間も根気強く、何日もひたすらパールの毛づくろいが続きました。
生きること、もう一度飛び回れることを少しも疑うことなしに、ただやるべき事をやる。
パールにとっては、当たり前のことなのでしょうが、そばで見ている私は何故かやるせな
い気持ちになったのです。

「パールよ、お前はどうしてそんなに頑張るんだ?」
「子どもの頃からヘタレと言われてきた私にあてつけるように」

五日ほどしてパールはケージから外に飛び出しました。

「あっ、あああ・・・」

パールは無言で床に落ち、かわりに私が声を出してしまいました。
パールは、私の視界から姿を隠しました。
床の上では、敵に襲われたら飛べない今の自分はどうなるかパールなりに心配したのか、
あるいは、ただ本能がそうさせているのか?

「パール!・・パール!」

つづく 5



私は本当に心配でした。ケージの入口から床まで1メートル30センチはありますから。

「パール!パアッル・・!」

大きな声でパールを呼び、元気であることを確認せづにはおれませんでした。
普段のパールなら「ピョイ!」と返事をするのですが、何の音沙汰もありません。
すると、少し時間をおいてベットの後ろから何かが目の前を通り過ぎて行きました。
おもちゃの鳥のように真っ直ぐにただチョコチョコとそして、また姿を隠しました。

「まあ、姿だけは見せておくか!」                                             「まじ心配そうに名前を呼ぶから!」

パールがそう思っていることは、私にはわかりました。

「私だけでなく、その場にいたら誰だってわかるんだよ。本当に!」

私は、パールにおちょくられているようで少し腹立たしくなりました。

「なんともないなら返事くらいしろよな!」

後は、無視することにしました。
心配すると疲れるんです、心底疲れるんです。
私は、網戸の外のベランダに目を向けました。いつもの気分転換です。
1畳ほどのベランダは、桜の葉で覆われ その隙間をサラサラと光を揺らし空気が流れ出るのです。

私の体と気持ちをリハビリしてくれるように。
静でよい気持ちにいく分なったかな?と思ったとき、足さきから何かが這い上がって来ました。
音も無く、誰に気づかれる事もなく!とパールは思って這い上がっているんでしょうが。

「チェ!本当にうざったいなぁー。もう気付いているよ。とうに!」

私が言い終わる前に右の肩には、パールが居ました。
そして、右耳を「ガァブ!」です。

「いったい何を考えているのか、この鳥は?」

本来、飛ぶ事もままならない体で「よくここまで来た」と誉めるところですが、私は疲れすぎていました。              それで、早くケージに戻り、少しじっとしてくれないかと思いました。
パールは私の肩からベットの上まで飛びました。                                        その度に羽はいたみ、ボロボロになるのに飛ぶ事をやめませんでした。
私は他の鳥のことは知りません。                                               ただ、パールが一度覚えた飛ぶ事の楽しさを決して手放すような鳥ではないことを知りました。
リハビリのためにひたすら頑張っている鳥の姿は否応なしに私の胸を熱くし、鳥の強い意志
は私に「すまなかった。頑張れ。」と思わせました。

つづく6

 

私がパールのある行動に規則性を感じ出したのはいつからだろうか                                        パールは水曜日の九時半になると決まって大声で鳴きだします。                                       そして、時間をおかずにドアホンが「ピンポン」となるのです。

「まさか?鳥に時間が分かるなんて?そんなこと・・・」

12月27日(水)にヘルパーさんは30分程遅れる事は事前に予定されていました。                          九時半になると今まで静かにしていたパールに変化が起きました。

「ぴぃー ピィーー」

ケージの入り口に陣取り「我ここにあり」と言わんばかりに声を張り上げます。                          でも「ピンポン」はなりません。 パールの声は益々大きくなり一向にやむ気配をみせません。

「うるさい! この馬鹿鳥!」                                               「一体何だって?」

パールはカーテンレールまで飛びさらに大声で喚き散らします。

「ピンポン!」

パールはケージの入り口に戻り ぴったっと鳴き止みました。                                  いつものように挨拶をしヘルパーさんが部屋に入った時です。                                  パールがヘルパーさんの左肩にとまり、

「やばい!」

私は瞬時に思いました。                                                   驚いたのはヘルパーさんも同じです。                                             近づけば逃げ、触れようとすれば嚙みつく。その凶暴な鳥が 今左肩にいるのですから。                      ヘルパーさんが噛みつかれることは避けようがない。

ところが

パールはヘルパーさんの頬に優しく愛撫し縮れ毛の髪を伸ばそうと毛づくろいを始めました。                    何と言う事だろう。作り話でもこんな事は、想像できない。                                  パールは何か口ずさんでいました。日本語でもフランス語でもロシア語でもない まして鳥のさえずりでもない。

「めにゃむにゃぴたりにゃほがゃらり・・・・・・・・・・・・ふぃふ・・・・」

「何か言っていますよね 何と言っているんですか」

パールはすぐに私の右肩に戻りました。                                            どんな気まぐれでパールがあんな行動を取ったのか分かりませんが そんな事はヘルパーさんにとってどうでもよいことでした。

満面の笑みで今にも泣きだしそうで

「パールちゃん どうしたんだろう!」                                           「初めて肩に止まってくれた」

パールがこの行動をとったのは後にも先にもこれ一回きりですがヘルパーさんのパールへの想いは強まりました。

「Kさん もしお出かけでパールの面倒を誰かがみるときいつでも私がみますからね」

パールの気まぐれは、忘れえぬ至福の時間ヘルパーさんにもたらしました。                              ヘルパーさんはパールのとった行動には何か深い意味があったと思い込んでしまいました。

つづく7

 

昨日までの私ならパールとヘルパーさんの関係が微笑ましく、楽しそうに感じたと思いますが今はそれどころじゃありません。

今まで漠然と感じていた 考え、いや仮説がむくむくと頭をもたげ何か途方もない物を発見したようなわくわく感に包まれました。

パールには一週間という時の流れ 更には一日の時間の変化がわかる。                              私がカレンダーを見、時計を見ようにパールの体内には自然に備わった能力がある。                        私はパールにこの能力があるかどうかより「なぜ必要なのか?」に興味がわきました。

一週間ごとにヘルパーさんがやって来る。                                          パールはヘルパーさんが愛想を振りまき媚をうっても無視していた。

「嫌いだ!」 「近寄るな!」

近づけば噛みつぞとばかりに これ以上は開けない程 口を開けて威嚇していた。

 

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